生前対策
贈与税の2つの制度
2024.04.05
贈与税には、「暦年課税制度」「相続時精算課税制度」の2つの制度があります。
両制度ともに贈与税の計算方法と相続税の関係を知っておく必要があります。
(1)暦年課税制度
①贈与税の計算
・基礎控除110万円までは贈与税がかからない
・税率は2パターンの超過累進税率
②相続税との関係
・相続開始前7年以内(※1)の贈与財産(4年~7年分は合計で100万円を控除した残額)については、基礎控除に関係なく相続財産に加算
・上記贈与税の計算で納めた贈与税額は、相続税額を限度に控除(マイナス分は還付されない)
(※1) 令和5年12月31日までの贈与については、相続開始前3年以内の贈与財産です。
(2)相続時精算課税制度
①贈与税の計算
・毎年110万円の基礎控除がある(※2)
・基礎控除とは別に、累積で2,500万円の特別控除がある
・上記の範囲内であれば、贈与税がかからない
・税率は一律20%
②相続税との関係
・暦年課税制度と異なり、贈与の時期にかかわらず、贈与財産から毎年の基礎控除110万円(※2)を控除した残額が相続財産に加算。
・上記贈与税の計算で納めた贈与税額は、相続税額から全額控除(マイナス分は還付される)
(※2) 令和5年12月31日までの贈与については、基礎控除はありません。
(3)どちらを使うかは選択制
これらの制度は、いずれかの選択制の制度です。両制度ともに、贈与した財産が贈与税の課税対象になりますが、それ以外にも相続税の計算に影響します。
なお、相続時精算課税制度を選択した場合、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、
暦年課税制度へ変更することはできません。
(4)層年課税制度と相続時精算課税制度のどちらが得か
例えば現金2,000万円を親から長男へ贈与するとします。
令和6年以後に一括(1年間)で2,000万円の贈与をする場合、相談時精算課税制度では、基礎控除110万円を控除した残額(1,890万円)から特別控除2,500万円を限度に控除できるので、
贈与税は0となります。暦年課税制度の場合は、基礎控除110万円を控除した残額に贈与税が課税され、税率の低い特例贈与の税率であっても約585万円の贈与税が課税されます。
したがって、親から長男へ2,000万円を贈与した場合について、贈与税のみに焦点をあてると、特別控除額2,500万円がある相続時精算税制度の方が得だといえます。
(5)将来の相続時の税額を含めての検討
上記の例で、親に相続が発生した際に、長男に2,000万円を贈与したのが10年前であったらどうなるでしょうか。
暦年課税制度であれば、相続開始前7年より前に贈与されたものは相続税の計算に含まれないので、相続税に影響ありません。
しかし、相続時精算課税制度では、10年前の贈与であっても基礎控除110万円を控除した残額である1,890万円を相続財産に含めて、相続税を計算することになります。
相続財産の課税価格次第ですが、相続時精算課税制度を利用した場合、贈与税はかかりませんが、相続税が高額になってしまうこともあり得ます。
このように、税負担を少なくして次世代へ財産を移転するためには、贈与税の計算だけではなく、相続税の計算も含めたトータルで判断する必要があります。